【感想】アーシュラ・K. ル・グウィン「闇の左手」
小説,アーシュラ・K. ル・グウィン Ursula Kroeber Le Guin,「 闇の左手」、早川書房,小尾 芙佐, 訳
闇の左手 (ハヤカワ文庫 SF (252)) Ursula K. Le Guin 小尾 芙佐 早川書房 1978-09 |
再読です。以前に読んだのは、20代前半の頃。
ゲド戦記の作者として有名なル=グウィンがつづる、ハイニッシュ・ユニバース年代記とよばれるSFシリーズの一つ。
SFとはいうものの、あくまでそれは色づけ。どちらかというと、異文化・自分とは異なる者との出会い・衝突・共存が主題となっているといえると思います。
大学の頃、比較文化学のゼミに属していた(たいして勉強せーへんかったけど・・・)私にとっては、ついつい惹かれるテーマです。
ただ、あまり読みやすい本ではありません。主な主役は、宇宙連合の大使として、辺境の極寒の惑星「ゲセン」との交渉に臨むゲンリー・アイ(地球人の男性)と、そのゲセンで彼と相対する現地人のエストラーベンの二人。
語り手が彼ら二人交互に入れ替わり、さらに合間に、ゲセンに伝わる民話や伝説・宗教説話等が差し挟まれます。架空の固有名詞が飛び交い、最初はかなり戸惑いました。
特に、ゲセンという星に住む人間は、両性具有で、ケメルと呼ばれる繁殖期?になるとそれぞれ変態して女性的・男性的になって交わるという特異な生態を持つという設定。
そのような生態を土台に生まれ育った価値観や風土・宗教観について、丁寧に語られていきます。
物語では、ゲンリー・アイとエストラーベン、時にはすれ違い、時には手さぐりしながら協力し合い、相手に通じたと思っては裏切られ、などを繰り返し、最終的には二人の中になんらかの絆が生まれます。
異世界の人と共存するには、まずは「違うことを認めること」から始めねばならないこと、そしてそれが口で言うほど頭で考えるほど簡単にできることではないことがひしひしと感じられます。
日本という狭い世界でずっと暮らしている私ですので、やっぱり頭で分かっているだけなのだけれど、「違うことを認めること」をいつも心のどこかにとどめておきたいと思います。
「ハイニッシュ・ユニバース年代記」に他の作品については、以前も図書館で借りて読みましたが、これからちょっとずつ手元にそろえていこうかと思っています。
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