【感想】NODA・MAP「ザ・キャラクター」

「贋作・罪と罰」NODA・MAP、作・演出 野田秀樹、(東京芸術劇場 中ホール)

NODA・MAPは、「贋作・罪と罰」以来、2回目。
あの時以来「野田秀樹の舞台やっぱすげぇ!」とインプットされたので、公演があるたびに見たいとは思ったが、チケットの金額に躊躇していて数年たってしまった。
たまには見よう!と思いたった今回。
今回もやっぱり、完成度ハンパなく高かった!充実感たっぷり。

※ここからネタバレです。これから見ようと思っている方はお読みにならない方がよいかと思います…。

ギリシャ神話と、町の書道教室と、そしてオウム真理教のあの事件が、見事なほどにうまく絡み合っていた。
紙と文字を重要な演出装置として使う、この見事さにはもう、感嘆。

"袖が神になる 神が袖になる"

これは、漢字=キャラクターならではの発想。
しかも、活字ではなくて、自ら筆をもって書く字ならではこそ。

こういう発想って、独りよがりになってしまいそうだけど、この舞台では見事に観客を巻き込み惹きつけていたように思う。
うう~む、すごい。

何故今、オウム事件をとりあげるのか?という疑問は残ったが、15年経った今だから、少し枯れた感覚で見られるということだろうか。
カラカラに乾いた紙に書く文字の連鎖として。

ただ、ギリシア神話の素養があったほうが、よりお話に入り込みやすかったかな、と思った。
私も、ごく一部の有名な神やエピソードくらいしか知らないので、セリフを聴きながら頭の中で整理しついていくのに必死だった。

古田新太の役どころは、胡散臭い教祖ということで、相変わらずよくハマってた。
宮沢りえは、最初声がぜんぜん違って聞こえて別人かと思った。
野田秀樹と橋爪功がよかったなぁ~。橋爪功はトボけた味の中に邪悪さ・弱さ・セコさを表現してくれるのがとても上手いと思う。
(もうちょっと近くで見れたら、もっといろいろ表情が見えて違ったのかもなぁ)

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「筆一本で世界を変える」

ジャーナリストにあこがれる若者の、このロマンあふれるフレーズが、あの卑劣な所業の言い訳にも使われてしまうとは。
言葉あそび、駄洒落からくる、この巧妙なすり替え。
そんな馬鹿な、というような事件は、こんな馬鹿みたいなすり替えが続くうちに起きてしまうのかも。
もしかしたら、自分は全然変わらないと信じて進んでいたのに、いつの間にか、正反対の一番遠くの場所に来てしまうってこともあるのかも。

誰でも"何か"になってしまう恐ろしさがあるのよ、という警告を、こういったエンタテインメントを通じて得るのは、一番強烈でグッとくる。
あぁ、ホンマおもしろかった。

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あ、ただ、ちょっとうまくまとまりすぎているんじゃないか、というという気もしないではなかった。

最後の最後、女性のセリフ

「忘れるために祈るの」

その後で「それでも祈り続けて残るものがある…」と続くのだけど、私はそこは無しでもいいんじゃないかと思った。
あとに続くセリフはちょっと言い訳がましいというか、取ってつけたような感じがして。

「忘れるために祈る」で留めることで、強烈なアンチテーゼになるのではないかと思ったんだけどな~。

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