【感想】NODA・MAP「フェイクスピア」
「フェイクスピア」、NODA・MAP、作・演出 野田秀樹、(新歌舞伎座)
関西で初めてのNODA・MAP。通算では4回目。
コロナ禍が続いていて、久しぶりの観劇。私のカンも鈍ったか、この舞台の「真の言葉」が何を意味しているのか、実際のどの事件をモチーフにしていたのか、気がつくのが遅かった。
そうか、だから「36年と永遠」前なのか!だから「頭を上げろ!」を何回も繰り返していたのか、だからパイロットだったのか、だから箱だったのか、だから最初に轟音が響き渡っていたのか…。
気がついたのは「ボイスレコーダー」という具体的な単語が出てきてから。
最後の30分を切ってから、全てが頭の中でつながっていく快感を覚えつつ、その非常さ・不謹慎さに恐れつつ、大きな衝撃とともに幕を閉じた。
(ここからネタバレ)
日航ジャンボ機墜落事故は、私もよく覚えている。たしか小学校4年生だったか、まだ飛行機に乗ったことがない子どもの私も、事故の悲惨さに恐れおののいた。
あの事件はとにかく国民の大きな関心事だったから、テレビも新聞もこの報道がこれでもかと続いた。
飛行機にはブラックボックス、フライトレコーダーというものがあるのを知ったのもあの事件だった。あの音声も、テレビのドキュメンタリー番組(多分、NHK特集)で直に聴いた。(あんな音声のが地上波で垂れ流されていたなんて、のどかな時代である…)
私もあの、真実の言葉を当時聴いたんだよなぁ。その事実を、改めて今回思い出した。
この舞台、フェイスクスピアの筋書き。今頃このモチーフ?と思ったけれど、36年も経った今だからこそできるということなのか。野田秀樹氏のコメントからもそれを感じる。
それからずっと、真実の言葉ってなんだろう?思いを引きずっている。
波乱含みの東京オリンピックが始まらんとし、どう考えてもモヤモヤとしたものが残る日々。Twitterを見ていると、どの意見にも全面的に賛成も反対もできない。
そんなとき、言葉で、人にものを伝えたり説得するというのは、やり方として簡単でも、実際にはすごく難しいことなのかもしれない、と思った。 言葉だけでは、人はなかなか心動かされないのかも。言葉だけじゃなく、その人の声色、動き、今までの遍歴、自分との関わり、そういうものを自然に総合して、私は判断している気がする。本などに記述した言葉=活字だけで他人を動かせるのは、言葉の使い方にそうとう長けている人だけなのかもしれない。
やっぱりTwitterは「つぶやき」=自分の気持をただ吐露する、のにぴったりなのであって、誰かに何かを伝える・人を動かす用途には合ってない気がするなぁ。でも、こんないまさら言ってもなぁ。災害情報とかもう実運用してるしなぁ。そろそろTwitterに変わる違うものがどこかで生まれているのかな。
などとつらつら考えた。
そしてイラストを稼業としている自分が、うかつに、安易に、言葉に手を出しちゃいけないなぁと思った。
さらに、1週間ほど前に参加したオンラインでのトークショーのことがあった。脚本の渡辺あやさんのファンゆえにクラウドファンディングでささやかな支援をした映画「逆光」のキックオフイベントでの、若き監督・須藤蓮さんの真摯な姿勢に感動したのもあって、自分は表現者としてどうしていきたい?という根源的な問いまで考えるようになってしまった。
まだ、答えは出ていない。でも、マジメに考えてみようと思っている。
…なんて、私風情にそんなふうにまで影響を及ぼす野田秀樹作品、やっぱり最高です。
私は、自分の好きなものを布教するのは苦手だし、人に強要するのが好きではないのだが、野田秀樹の舞台は、日本語が理解できる人すべての人に見て欲しい!と思う。
何か必ず自分の中にひっかかるものがあると思うから。
あ、今回の公演、演出・俳優・音楽もちろんよかったですよー。生・高橋一生は初でしたが、いい意味で期待通りで、後半のピリピリした厳しい時間帯も怖くてすばらしくて…。ちょっと出来すぎなんじゃないかなって思うくらい。
そしてシェイクスピアの引用がほとんど分からない自分の教養の無さも思い知ったが。やっぱ戯曲読まないとなぁ。
今まで見た野田秀樹 作品
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