【感想】S.J.ローザン「シャンハイ・ムーン」
小説,S.J.ローザン S.J.Rozan,「シャンハイ・ムーン」The Shanghai Moon,創元推理文庫,直良和美 訳
シャンハイ・ムーン (創元推理文庫) | |
S・J・ローザン 直良 和美
東京創元社 2011-09-29 |
これは、超ーーーーーーーー面白かったぁ。
第二次世界大戦末期の上海で起きた謎を、現代のニューヨークにいる中国系女性私立探偵が探る、という、ちょっと歴史ドラマめいたところが私の好みだったのもあって、560ページの長編ながら後半以降はほぼ一気に読んでしまいました。
題材となる舞台・時代が近いので、浅田次郎の「蒼穹の昴」を思い出しましたが、話はあそこまで荒唐無稽でははないです(笑)。
歴史モノとはいえ、描いているのは普遍的なことでした。
「家族は、自分では選べない」
それは、重い枷となることもあれば、心の支えとなることもある・・・。
時代に翻弄された、と言う言葉では片付けられない、人々のいろいろな営みが、当時も、そして今も、いたるところで繰り広げられてるんだなぁと、深く感じ入りました。
今回の語り手は、リディア。
リディアのときは、つべこべいろいろと言い訳が多いけどやたらと血気盛んで、そういうところが鼻につくところがあったのですが、今回はそれが良い方に作用してる気がしました。
彼女のガンガン前に進んでいくスタイルが、つらい過去に翻弄・支配されている年寄りたちの胸の内をこじ開けるために今回は必然だったんだなーと素直に思いました。
しかし、リディアのやっかいな、でも愛すべきお母さんが出てくると、ちょっと自分の母を思い出します。
ま、母親と娘って、ああいう感じになっちゃうよね。
これ以上は踏み込むと壊れちゃう、という部分をお互い感じて牽制しながらやりとりをする。でも完全にうまくいかなくて小さな衝突の繰り返し。でも、離れられない。なんでしょうかね。
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